個人事業を法人化する(法人成り)

個人事業主の方が事業が軌道に乗ってきた場合、法人化すると節税になるということはよく耳にするかと思います。

既存の個人事業を法人化すること、これを「法人成り」といいます。

今回は法人成りのメリットとデメリットについて、税理士、公認会計士の観点から整理します。

法人成りに関する主な論点を一通りご理解いただける内容となっていますので是非ご一読ください。

以下のような方におススメの記事です
・法人成りを考えている個人事業主の方
・法人成りの判断におけるポイントを整理したい方
・税金負担が多いと感じている個人事業主の方
・融資を受けたいが個人で負債を負うことが不安な個人事業主の方
・国民健康保険料の負担が多いと感じている個人事業主の方

法人成りとは

個人事業主の方が、法人を設立し法人に事業を引き継がせることを「法人成り」といいます。

個人事業は「事業主本人」が事業を営んでいるという実態となりますが、法人を設立することにより事業主本人ではなく全くの別人格である「法人」が事業を営むというかたちに変わります。そして事業主は法人の所有者である株主、かつ法人を経営することを委任された取締役という立場になります。

法人成りのメリット・デメリット

法人成りのメリットとデメリットで主なものは、以下の通りです。

法人成りのメリット

①税率の違いによる節税

事業により生み出される所得には、個人・法人いずれの場合でも税金が課せられますが、個人事業の場合は所得税等の個人に課される税金が課されます。法人の場合は法人税などの税金が課せられることとなり税率がそれぞれ異なります。

■個人所得にかかる税率

  • 所得税・・・累進税率が適用されており、所得(≒利益)が増えるほど税率が上がります。(5%~45%)
  • 住民税・・・一律10%+均等割5,000円
  • 事業税・・・所得から290万円の控除された額に3~5%の税額がかかります。

■法人所得にかかる税率

  • 中小企業の支援目的の特別措置ではあるものの、法人税は所得に応じた税率が適用されます。(15%~23.2%)
  • そのほか、法人税額を基準として、住民税及び事業税がかかります。住民税は所得にかかわらず最低70,000円の均等割りがかかります。

個人、法人ともに数種類の税金が課せられることとなり少々複雑なため詳解は避けますが、所得の増加に対して課される税負担額の割合は、下記表のとおりです。 

所得が300万円半ば程度で税負担率は23%程度で同水準となり、その後個人が上がり続けていくのに対して、法人は上昇が緩やかとなり、最終的には33%程度で頭打ちとなります。

このように、税金だけのことを考えると、所得が300万円台半ばを過ぎてくると、法人の方が負担が少ないということになります。

②給与所得控除による節税

個人事業の場合は、事業での利益は経営者個人に帰属するため、経営者への給与という概念はありません。

一方、法人の場合は、法人の取締役である経営者へは当然に給与(役員報酬)の支払いができ、税務上経費となります。そのため、役員報酬を経費にできる分だけ、所得が減ります。

この場合、役員報酬には個人としての所得税が課税されることとなりますが、以下の点で税金が安くなります。

  • 役員報酬から給与所得控除をすることができるため、その分法人と個人の合計の所得が減る。
  • 役員報酬の額が一定未満なら法人の税率より個人所得の税率の方が低くなる。

下記表のように、法人の場合の方が合計の税額が安くなります。

③経費の範囲が広がることによる節税

経費にできる範囲は、個人事業よりも法人の方が広いことが多いといえます。例えば、役員の自宅家賃が代表例です。

個人事業の場合、役員の自宅賃料は、家事按分(※プライベートと事業用の比率で按分すること)により、事業で使用している割合だけ経費にできます。面積で按分した場合は、事業用の割合は通常50%に満たないでしょう。

一方、法人の場合は、社宅用として法人契約することで、概ね80%程度を経費にすることができます。経費にできる金額の計算方法は国税庁が明示しています。No.2600 役員に社宅などを貸したとき|国税庁 (nta.go.jp)

上記は代表例ですが、個人と法人を比べると、全体的に法人の方が経費にできる範囲が広がるため、所得が小さくなり、節税になるケースが多くなります。

④社会保険料(健康保険料)が抑えられる

社会保険料は、個人事業の場合、「国民健康保険」と「国民年金」に加入することになります。

法人の場合は、届け出をすることにより全国健康保険協会、いわゆる「協会けんぽ」で健康保険と厚生年金に加入することができます。

ここで着目するのは「健康保険」です。(※年金保険料は、納付額により将来の受給額が変わるため減額がメリットとは一概には言えません)

国民健康保険料は、所得に応じて算定され、扶養が増えるほど増額となります。年額最高82万円(40歳以上99万円)であり、扶養がいなくても850万円程度の所得があると上限に達することとなります。

一方、法人の場合、役員報酬の金額により保険料率が決まります。そのため、役員報酬の設定金額によって、健康保険料が小さくなります。役員報酬を月額30万円にした場合、健康保険料は年額35~42万円、役員報酬を月額8万円にした場合には年額7~8万円程度に収まります。 都道府県毎の保険料額表 | 協会けんぽ | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)

⑤消費税の免除

消費税は、前々期の売上高が1,000万円超の場合に、納税義務が生じます。(初めて1,000万円を超えた年の2年後から消費税を納税します)。

前々期の売上高を基準に判断するので、設立2年目までは、原則消費税納税義務がありません。

法人成りすると、個人事業の期間は考慮されないため、法人成り後2年間は消費税の納税義務がなくなります。そのため、個人事業で続けていた場合と比べて、2年間ものあいだ消費税の納税義務が免除される可能性があります。

ただし、資本金が1,000万円以上の場合や、設立直後の6か月間の売上高と給与支払額が1,000万円を超える場合など(最初からそれなりに規模が大きな会社)は、設立後1期目や2期目から消費税納税義務がある可能性があるためご留意ください。 この点については、別記事にて詳解します。

また、2023年からはインボイス制度という消費税制度が開始となり、消費税の納税についての戦略がより複雑になりますので、ご留意ください。

⑥所有と経営の分離

ビジネスを行うにあたっては、仕入れや借入などにより、多くの負債を抱えることとなります。そのような債務は、個人事業の場合には、当然に経営者個人に帰属することになります。

一方法人の場合には、債務は(もちろん資産も)法人に帰属するため、万が一債務不履行になった場合においても、経営者個人として保証していなければ、経営者個人として債務を負いません。

これは、所有と経営が分離しており、株主は有限責任で出資額(会社設立の際などに資本金として出資した額)までしか責任を負わないためです。

借入などの多額の債務が、自分個人にのしかかっているか、別人格である法人が負っているかという点は、経営者の方にとっては夜の寝つきに影響が出るかもしれません。

法人成りのデメリット

①管理コスト

個人ではかからないものの法人化する場合にかかるコストが以下の通りです。

  • 設立費用・・・株式会社を設立する場合、通常約20-30万円程度の費用がかかります。
  • 税理士費用・・・税理士に決算や申告を依頼する場合、通常最低でも約30万円程度かかります。記帳を代行してもらう場合などには更に金額が大きくなります。既に個人事業として税理士に依頼している場合でも、作成書類が増えることなどから、通常法人になった場合税理士報酬は増額となります。

②社会保険料が強制加入

個人事業の場合は、常時5人以上雇用していなければ、従業員の社会保険の加入は任意です。

一方、法人の場合は、従業員の社会保険への加入が強制となります。

社会保険に加入する場合には、事務負担が増えるほか、社会保険労務士などへ給与計算などを依頼する場合にはコストもかかります。また、給与額に応じて支払う社会保険料の50%は事業主(会社)が負担することになるためその負担コストも増加します。

番外 税務調査

一概には言えませんので「印象」の域を出ませんが、個人の場合よりも法人の方が、税務調査を受ける可能性が高いように思われます。税務調査に対応する負担や、税理士に立ち会ってもらう費用がかかります。

 

法人成りの際の手続

法人成りの際の手続きは、別記事にて詳解します。①通常の会社設立手続きと、②個人事業からの事業資産負債の引継ぎにかかる手続き検討が必要となります。

まとめ

個人事業のまま継続するか、法人成りするかどうかは、上記のような点を総合的に判断していくことになります。諸々を考慮し、所得が800万や1,000万円をラインに法人化をするというような見解が一般的となっています。

しかし、その他のメリットを上手く活かしていくことによって、それよりも早い段階で法人成りをした方が良い可能性も大いにあります。事業を開始している方はご自身の状況に合わせていつ法人成りをするべきか、早い段階で一度シミュレーションすることをおススメいたします。

法人成りをご検討されている方や一度シミュレーションしてみたい方、ぜひお気軽にお問合せください。

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